ワンルーム幽霊物語

僕の部屋には幽霊が出た。

詳しくは漬物屋と幽霊、その出会いと終わり - そして僕は初老に暮れる ←こちらを参照してほしい。

 

幽霊、なんであの部屋に出たんだろう。

建物としては築2〜3年の新しい物件。管理会社に聞いてみたけども以前の住人は全員男性(26~27年前なんて個人情報云々がユルユルだった)だった。

 

大学生?くらいの綺麗な女性。ノースリーブにタイトスカート、というイデダチだったのでめちゃくちゃ古い霊という感じはしなかった。むしろ今でも通じる格好。

漬物屋と幽霊、その出会いと終わり - そして僕は初老に暮れる ←もう一度読んでいただくとわかるのだが、玄関開けたら二歩でお墓の立地。壁なんかなくていきなりお墓。もうお墓の敷地内にたてた様なアパートだった。一応裏手の大家さんのお寺に話を聞いてみると

「ああ、あそこは檀家が引っ越してしまったり家族が途絶えて誰も面倒見てくれなくなったお墓を移動してきているんだよ」

「え?女性の幽霊?聞いた事ないなぁ…あの部屋、でるの?」

住職さんが言うには

「無縁仏って聞くと放置されてる様に思うかもしれないけども、毎月一回は全部のお墓を綺麗に磨いて線香あげてお経も読んでるから、年に数回しか来ないお墓よりも手厚いよ」

なるほどなるほど。確かに苔むしった様な後はなくいつも綺麗にされていた。感覚として良くある『墓地こわい』系のおどろおどろしい感覚はゼロだった。

 

オカルトブームだった当時、幽霊といえば白い洋服または着物、白い顔、足が無い、うらめしや的なコール&レスポンス、ポルターガイスト現象等々…相場が決まっていたのだ。もっとフォーマットを守ってもらわないとこちらも正しく怯えられない。ポルターガイスト的な事(テレビが勝手に点いたり)は少しは有ったが昔のブラウン管の中古テレビを買ったことがある人には理解できると思うが、当時のフナイ等価格を抑えた中古のテレビなんてのは違法無線を積んだトラックが横を通り過ぎるだけで勝手に点いたりチャンネルが変わったりしたものなのだ。

 

そもそもオカルトブームでの幽霊発生条件は「恨みつらみ」「知ってほしい」が原因で出てくるフォーマットだったので実家から離れ、周りに友達もいなかった僕にそれは無いだろう、と単純に考えていた。「捨てられて死んだ女性」なんてのが言われたが、過去付き合っていた子の誰とも似ていなかったし、そもそも誰も死んでなかった。まてよ?実は生き霊で?とも考えたがこんな美人に恨まれる理由がない。

 

眼鏡のフレーム外に突然はっきり映る美人はほぼこちらを意識する事なく自分の部屋にいる様な素振りだった。僕のベッドの頭側に椅子に座る様に(つまり空気椅子)佇み、なにか本を読むような仕草をしていた。ある日は磨りガラスに映る台所に料理をするように流しに向かって立って何かをしていたり。

 

多分ここの部屋での記憶を部屋が覚えていて投影しているような感じだった。

 

 

いくら考えても今更わからないのだけども、別に怖くはなかった。

 

 

オチ?

 

ないよ?